前の項目では、犬の壊死性髄膜脳炎(いわゆるパグ脳炎)について解説しました。
院長松木は大学在職時代に、犬の脳炎の原因を突き止めたいと15年ほど研究を続けておりました。そのひとつのゴールが、犬の脳炎の原因は小麦過敏症だろうという論文です。2012年に出しました。英文ですが無料で読めます。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvms/74/6/74_11-0507/_article
すごく簡単に説明すると、犬が小麦を食べる→小麦に含まれるグルテン(タンパク質)が異物と認識されて抗体ができる→グルテンに対する抗体が脳の細胞にもくっつく→脳が異物と認識されて炎症が起こる、というわけです。
小麦グルテンに対する抗体(脳の細胞に対する抗体でもある)は、壊死性髄膜脳炎(いわゆるパグ脳炎)だけではなく、壊死性白質脳炎(ヨークシャー・テリアやチワワで起こるタイプの脳炎)や肉芽腫性髄膜脳脊髄炎(GME)の犬でも見つかります。
ちなみに、人間でも「Gluten encephalopathy(グルテン脳症)」という、似たような状況があります。人間ではもともとセリアック病という、小麦を食べて腸がやられる病気が知られていましたが、脳や皮膚もやられることが分かりはじめています。
ワンちゃんが脳炎にかかって当院に来院された場合、事情が許すかぎり、小麦(麦全般)を含まない食事をお薦めすることにしています。幸いなことに、最近はアレルギー対策として小麦を含まない食事がいろいろ市販されていますので、そのなかから食べやすいものを選んでいただけます。
食事とは違いますが、タバコも犬の壊死性髄膜脳炎が発症する強い理由になるので、脳炎のワンちゃんがいる室内では禁煙してください。